オルミエント ® (バリシチニブ)
以下は適正使用情報として、本邦における承認事項(用法・用量、適応、剤形など)以外の情報が含まれる場合がございます。薬剤の使用に際しては、製品情報ページにある最新の電子化された添付文書をご確認ください。
<効能共通>オルミエント(バリシチニブ)投与中に生ワクチン/不活化ワクチンの接種を行ってよいか?新型コロナウイルスワクチン接種を行ってよいか?
バリシチニブ投与中の生ワクチン接種は行わないでください。バリシチニブと不活化ワクチンの併用投与は可能です。バリシチニブ投与中の新型コロナウイルスワクチンの使用については検討されていません。ワクチン接種のリスクとベネフィットを考慮し、接種の可否を判断してください。
[解説]
<効能共通>
バリシチニブ投与中は、生ワクチン接種による感染症発現のリスクを否定できないため、生ワクチン接種は行わないでください1)。
関節リウマチ(RA)、アトピー性皮膚炎(AD)及び円形脱毛症(AA)患者を対象とした臨床試験中は生ワクチン(帯状疱疹ワクチンも含む)の使用を禁止していました。なお、帯状疱疹のリスクがある患者は以下の期間に限り帯状疱疹予防用生ワクチンを接種することができました。
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RA試験では、治験薬投与開始の30日超前
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AD試験及びAA試験では、治験薬投与開始の4週間超前2-4)
RA、AD及びAAを対象としたバリシチニブの第Ⅲ相臨床試験中、不活化ワクチンの季節性接種及び緊急接種(狂犬病又は破傷風など)は許可されていました2-4)。
以下の理由により、RA患者におけるバリシチニブと不活化帯状疱疹ワクチンの併用に関する情報は得られていません。
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RA患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験を実施している時、不活化帯状疱疹ワクチンはありませんでした。
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不活化帯状疱疹ワクチンを使用した試験は実施されていません。
AD患者及びAA患者を対象とした臨床試験では、試験開始前に不活化帯状疱疹ワクチンの接種を開始した被験者は、割付けの4週間以上前に2回目の接種を終了している必要がありました2-4)。
バリシチニブ投与中の新型コロナウイルスワクチンの接種について
バリシチニブ治療を受けている患者における新型コロナウイルスワクチンの有効性及び安全性を検証していません。
また新型コロナウイルスワクチン接種を受けた患者におけるバリシチニブの安全性及び有効性についても検証していません。
バリシチニブ治療を受けている患者におけるワクチン接種については、新型コロナウイルスワクチンを含めいずれのワクチンについても、処方医師の臨床的判断に従うこととし、患者のリスク因子とワクチンのリスク及びベネフィットを十分に考慮し、接種の可否を判断してください。リスクが高い場合、又は緊急を要する場合は、感染症専門医に相談してください。
患者さんが接種を予定されているワクチンが生ワクチンであるかどうかを製品の電子添文等の情報により確認してください。
新型コロナウイルスワクチンについては、最新の情報を確認することをお勧めします。
● 世界保健機関(World Health Organization)
● 米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control)
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https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/vaccines/index.html 最終アクセス日:2023年4月13日
● 厚生労働省 新型コロナワクチンについて
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https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_00184.html 最終アクセス日:2023年4月13日
<関節リウマチ>
関節リウマチ患者における新型コロナウイルスワクチン接種に関する学会ガイドライン
関節リウマチ患者におけるワクチン接種に関しては、日本リウマチ学会、米国リウマチ学会及び欧州リウマチ学会からガイダンスが出されています6-8)。
日本リウマチ学会のガイダンスでは、「ワクチンを接種するかどうかは、接種のリスクと感染のリスクを比較して決めることになります。患者の併存疾患によって重症化リスクはそれぞれ異なり、感染リスクも感染の流行状況によって変動するため、リスクベネフィットを勘案したうえで接種の可否を判断してください。」とされています6)。
新型コロナウイルスワクチン接種前後のバリシチニブの休薬・再投与については、電子添文上の規定はありません。
日本リウマチ学会のガイダンスでは、「通常のワクチン接種の場合、免疫抑制剤やステロイドを中止・減量することはありませんので、接種前後で免疫抑制剤やステロイドは変更せず継続すべきと考えます。」とされています6)。なお、バリシチニブは免疫抑制剤に該当します。
<アトピー性皮膚炎>
アトピー性皮膚炎患者における新型コロナウイルスワクチン接種に関する学会ガイドライン
成人アトピー性皮膚炎患者におけるワクチン接種に関しては、日本皮膚科学会、米国皮膚科学会、欧州皮膚科性病科学会及びEuropean Task Force on Atopic Dermatitis(ETFAD)からガイダンスが出されています9-11)。
日本皮膚科学会のガイダンスでは、アトピー性皮膚炎患者に対する mRNA ワクチン接種に関しては十分な情報がないものの、国外からはアトピー性皮膚炎患者へも健常人同様にmRNA ワクチン接種が推奨されること、及びアトピー性皮膚炎に対する全身療法は mRNAワクチン接種の禁忌とならないとされています9)。
<アトピー性皮膚炎、円形脱毛症>
ワクチン接種前後のバリシチニブの投与について
新型コロナウイルスワクチン接種前後のバリシチニブの休薬・再投与については、電子添文上の規定はありません。
日本皮膚科学会のガイダンスでは、「現在全身療法中でも mRNA ワクチン接種に際して治療を中断する必要はない」とされています。また、国内外で異なる見解が示されていることも紹介されており、ETFADのガイダンスでは「ワクチン接種後1週間はJAK阻害剤を休薬する」こと、日本リウマチ学会のガイダンスでは「原則同じ用量で投与継続」とされています9)。
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Taylor PC, et al.: N Engl J Med., 376(7), 652-662, 2017(AIM00548)
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Reich K, et al.: JAMA Dermatol., 156(12), 1333-1343, 2020(AIM00834)
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King B, et al.: N Engl J Med., 386(18), 1687-1699, 2022(AIM00858)
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World Health Organization. COVID-19 vaccine tracker and landscape. Updated May 20, 2022.
(https://www.who.int/publications/m/item/draft-landscape-of-covid-19-candidate-vaccines)最終アクセス日:2023年4月7日
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日本リウマチ学会 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連情報(患者向け) (https://www.ryumachi-jp.com/)最終アクセス日:2023年4月7日
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Vaccine Clinical Guidance for Patients with Rheumatic and Musculoskeletal Diseases.
(COVID-19 Guidance (rheumatology.org))最終アクセス日:2023年4月7日
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EULAR View-points on SARS-CoV-2 vaccination in patients with RMDs. European Alliance of Associations for Rheumatology. January 2022.(EULAR Sars-Cov-2 Vaccination RMD Patients | EULAR)最終アクセス日:2023年4月7日
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公益社団法人日本皮膚科学会 アトピー性皮膚炎・蕁麻疹治療安全性検討委員会 新型コロナウイルスのワクチン接種について
(https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/about/atopic_urticaria_0305.pdf)最終アクセス日:2023年4月7日 -
Gresham LM, et al.: J Am Acad Dermatol., 84(6), 1652-1666, 2011(AIM00876)
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Thyssen JP, et al.: J Eur Acad Dermatol Venereol., 35(5), e308-e311, 2011(AIM00874)
[略語]
AA = 円形脱毛症
AD = アトピー性皮膚炎
JAK = ヤヌスキナーゼ
RA = 関節リウマチ
最終更新日: 2023年04月
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