オルミエント ® (バリシチニブ)
以下は適正使用情報として、本邦における承認事項(用法・用量、適応、剤形など)以外の情報が含まれる場合がございます。薬剤の使用に際しては、製品情報ページにある最新の電子添文をご確認ください。
<効能共通>オルミエント(バリシチニブ)の副作用「血液障害(好中球・リンパ球・ヘモグロビン減少)」の発現状況、発現機序及び発現した場合の対処法は?
血液障害(好中球・リンパ球・ヘモグロビン減少)の発現状況、発現機序及び発現した場合の対処法は以下の通りです。
[解説]
※本剤は、国内外の試験成績に基づいて承認されました。このため、一部国内の承認効能又は効果、用法及び用量と異なる成績が含まれています。
《発現状況》
<関節リウマチ>
関節リウマチ患者を対象とした長期継続試験を含む国内外臨床試験10試験の併合解析において、バリシチニブが投与された症例のうち、CTCAEグレードの悪化が認められた患者の割合は、好中球数減少で21.3%(773/3621例)、リンパ球数減少で50.3%(1882/3741例)、ヘモグロビン減少(貧血)で41.3%(1546/3742例)でした1)。
アトピー性皮膚炎患者を対象とした長期継続試験を含む国内外臨床試験5試験の併合解析において、バリシチニブが投与された症例のうち、CTCAEグレードの悪化が認められた患者の割合は好中球数減少で11.4%(185/1617例)、リンパ球数減少で12.9%(208/1617例)、ヘモグロビン減少(貧血)で8.5%(137/1619例)でした2)。
<円形脱毛症>
円形脱毛症患者を対象とした長期投与期間を含む国内外臨床試験2試験の併合解析において、バリシチニブが投与された症例のうち、CTCAEグレードの悪化が認められた患者の割合は、好中球数減少で21.1%(260/1235例)、リンパ球数減少で16.8%(208/1235例)、ヘモグロビン減少(貧血)で14.2%(175/1236例)でした2)。
各グレードへの変化は以下のとおりです。
(関節リウマチはversion 3.0のみ)
(関節リウマチはversion 3.0のみ)
<新型コロナウイルス感染症:COVID-19>
※ACTT-2試験ではCOVID-19の症状及び重症度を考慮し、有害事象についてはDAIDSのグレード3又は4の事象を収集しました。なお、以下に示す結果は臨床検査値異常を含まない有害事象です。
SARS-CoV-2による肺炎患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験(ACTT-2試験)のバリシチニブ+レムデシビル併用群における、グレード3以上の好中球数減少の発現割合は0.2%(1/507 例)、グレード3以上のリンパ球数減少の発現割合は4.7%(24/507 例)、グレード3以上のヘモグロビン値減少の発現割合は5.9%(30/507 例)でした3)。
(参考:ACTT-2試験における有害事象の収集及び評価について)
ACTT-2試験ではCOVID-19の症状及び重症度を考慮し、有害事象についてはグレード3又は4*の事象を収集しました。また、治験薬との関連があると判断されたグレード2*以上の薬剤関連過敏症反応、グレードを問わない静脈血栓塞栓関連事象を収集しました4)。
*Division of AIDS(DAIDS)Table for Grading the Severity of Adult and Pediatric Adverse Eventsを用いて、有害事象及び重篤な有害事象の重症度を評価しました。グレード2~5は以下のとおりです4)。
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グレード2:中等度
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グレード3:高度
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グレード4:生命を脅かす可能性のある事象
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グレード5:有害事象に関連するすべての死亡はグレード5に分類
《発現機序》
<効能共通>
血液増殖促進因子であるエリスロポエチン、G-CSF、GM-CSF、トロンボポエチンはJAK-STAT経路を介してシグナルを伝達します。これらのシグナル伝達経路の過剰抑制は、赤血球や白血球の産生能力を損なう可能性があります。バリシチニブはJAK1及びJAK2活性を阻害し、STATのリン酸化及び活性化を抑制することにより、免疫機能及び造血に関与する各種サイトカインのシグナル伝達を阻害します。そのため、バリシチニブ投与により、貧血が認められる場合や、好中球やリンパ球が一定レベル以上低下した場合に、感染症の発現リスクが上昇する可能性があります1,2)。
《対処法》
<関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症>
バリシチニブの投与開始後は、定期的に血液検査を行ってください。
好中球数、リンパ球数、ヘモグロビン値の減少が認められた場合は、以下の記載を参考に、患者さんの病態を考慮の上、適切にご対応ください1,2,5)。
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好中球数の減少が認められると、細菌や真菌の感染のリスクが高まるため、感染を疑う症状(発熱、寒気、咽頭痛など)が出たらすぐに病院に連絡するよう、患者さんにご指導ください。
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リンパ球数減少自体は無症状である場合が多いため、検査値の推移にご留意ください。
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顔色が悪い、易疲労感、倦怠感、頭重感、動悸、息切れなど、貧血の初期症状が出たらすぐに病院に連絡するよう、患者さんにご指導ください。